57歳の誕生日は、第58回日本移植学会(@名古屋観光ホテル)で迎えました。
日本移植学会への参加も30回目。
その節目に栄誉ある「岩城賞」を受賞し、深い感謝の一日となりました。
受賞対象の研究は、中学教諭を対象とした行動変容の研究です。 その研究プロセスが本当に大変だったので、その根気と努力を含め評価していただいたことに、感謝の気持ちでいっぱいになりました。
4年前、1万校を超える全中学校の先生方を対象とした調査を含む研究を構想した際、どのようにしたら、お忙しい中、また、様々な調査が依頼される中で調査にご協力いただけるのか・・・なす術がありませんでした。 そこで、まず、中学教諭との信頼を構築し、インタビューを行うことから始めました。 しかし、中学教諭の知り合いさえいない状況で、途方に暮れていた時、道徳教諭の勉強会をご紹介していただきました。 毎月東京に行って、勉強会に参加させていただきながら、少しずつラポール形成を行いました。
私にとっては初めての中学校教育の現場、しかも道徳の授業はまだスタートしたばかりで、皆が創り上げる段階にありました。
戸惑いながらも、勉強会に参画させていただきながら、中学校の先生方が教育において何を大切にされているのか、多くの学びをいただきました。 1年目は、このようなプロセスを通して、少数の先生方への個別インタビューによって、行動障壁や行動動機がなんとなく浮かび上がりました。
2年目は、さらに多くの先生方にインタビューしながら、行動障壁や行動動機が明確になり、調査項目が導出されました。 同時に、インタビューを通して、現場で、資材へのアクセスがお困りであったことがわかりました。拙速に研究を進めることではなく、まずは、困っていらっしゃる方がに寄り添って、それを解決するwebsiteを構築しました。
社会に資する研究とは、相互の信頼から築き上げるものであると改めて実感しました。
3年目は、6都道府県でパイロットスタディとしての定量調査を行いました。 この時、全校にご回答いただくためにどうすればよいのか、現場の先生方からご意見を伺い検討しました。
その結果、圧着ハガキ型のダイレクトメールを送り、それを開いていただいた内面に掲載しているQRコードからwebアンケートに回答していただく方法を開発しました。 しかし、「ダイレクトメールをごみ箱に捨てずに開いていただく」、さらには「QRコードを読み取っていただく」という行動を促すのは簡単ではありません。
行動科学理論に基づき、何度も試作を検証し、ダイレクトメールを設計しました。
その結果、42%の先生からから回答をいただきました。見ず知らずの私からのダイレクトメールを開けて、長い調査にご回答いただいたことに、感謝しかありませんでした。
そして4年目、本格的な全国調査に挑みました。 前年度の結果を分析し、定量調査の項目やダイレクトメールの中身・表現を改善しました。 最大の難関は、全国の中学校10,810校の住所を調べてダイレクトメールを送るというプロセス。
それを乗り越え、ようやく実施できたのが、今回の調査結果です。
今回の調査によって、授業実施の現状、授業実施に躊躇する要因(行動阻害因子)、授業実施の動機付け要因、行動促進のための組織内因子、組織外因子(政策含む)が明らかになり、課題解決への具体的な施策提言に至りました。
4年間の根気と努力も含めてご評価くださったことに、深く深く感謝しております。 研究とは、本質の解明に向けて大胆に挑戦しつつ、緻密に愚直に続けるものだと思っています。 今回の受賞を糧とし、一層の精進を重ねてまいりたいと思います(研究はまだ続きます)。
このように研究を続けていけるのは、その先で、困りことを抱えている人の一助になったり、課題解決微力ながらつながるから。 関わってくださった方々、支えてくださった方々に、深く感謝申し上げます。
2022年10月15日
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